勤労の義務をはたしていないので、憲法違反になるのでしょうか?

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前提として、日本国憲法第25条には「勤労の義務」という条文があります。つまり、国民は勤労に従事することが求められています。しかし、勤労の義務を果たしていない人がいる一方で、それが憲法違反になるのかどうかについては議論が分かれるところです。

勤労の義務とは

まず、勤労の義務とは何でしょうか。憲法第25条では、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」としつつも、「これを確保するために、国は、すべての労働者に対し、公正な報酬、労働時間制限、休息及び余暇、社会福祉の保護及び職業上の安全衛生の確保等の措置を講ずる」と定められています。

つまり、国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を持つ一方で、国はその権利を確保するために、労働者に対して公正な報酬や労働環境を整備することが求められています。

勤労の義務を果たしていない人がいる

ところが、現実には勤労の義務を果たしていない人が存在します。例えば、ニートや引きこもり、生活保護受給者などです。

こうした人々には、自分で稼いだお金で生活することができず、社会からの援助が必要になっています。そのため、勤労の義務を果たしていないことが、社会的問題として取り上げられることがあります。

勤労の義務を果たしていないことが憲法違反かどうか

では、勤労の義務を果たしていないことが憲法違反になるのでしょうか。

答えは、はっきりとはしていません。憲法学者や法律家の間でも、意見が分かれているところです。

憲法違反となる理由

勤労の義務を果たしていないことが憲法違反になるとする理由としては、以下のようなものが挙げられます。

社会契約の原則に反する

まず、社会契約の原則に反するという理由があります。社会契約とは、国民が国家に一定の権利を与える代わりに、国家が国民に一定の義務を負う、というものです。

つまり、国民が権利を行使するためには、その対価として義務を果たすことが求められている、ということです。勤労の義務も、この社会契約の原則に基づいて存在しています。

そのため、勤労の義務を果たしていないことは、社会契約に反する行為となり、憲法違反になる可能性があるという意見があります。

基本的人権を侵害する

また、勤労の義務を果たしていないことが、基本的人権を侵害するという意見もあります。勤労は、自己実現の手段であると同時に、自己責任や社会貢献という意味でも重要な役割を果たしています。

そのため、勤労の義務を果たしていないことは、自己実現や社会貢献の機会を奪い、基本的人権を侵害するという指摘があります。

憲法違反にならない理由

一方で、勤労の義務を果たしていないことが憲法違反にならないとする意見もあります。

勤労の義務は義務ではない

まず、勤労の義務は、「義務」という言葉が使われているものの、法的拘束力があるわけではありません。つまり、勤労の義務を果たさなくても法的に罰せられるわけではないのです。

勤労の義務は目安である

また、勤労の義務は一種の目安であり、あくまでも社会的な規範であるという意見もあります。憲法第25条には、「国民は、その能力に応じて、その労働に従事する義務を負う」とありますが、この「能力に応じて」という部分が、勤労の義務が法的拘束力を持たない理由の一つとなっています。

まとめ

勤労の義務を果たしていないことが憲法違反になるかどうかについては、意見が分かれるところです。一方で、社会契約の原則に反する、基本的人権を侵害するなどの理由から、勤労の義務を果たさないことが憲法違反になる可能性もあると指摘されています。一方で、勤労の義務は法的拘束力を持たず、あくまでも目安であるという意見もあります。

いずれにせよ、勤労の義務は、健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要なものであり、社会的な規範として、できるだけ多くの人が果たすことが望ましいとされています。

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